手描き友禅のきものを作るには
着物を誂えるときは、具体的にはどのようにオーダーすればよいのでしょうか。お気に入りの一枚ができ上がるまでの製作行程をご紹介します。
手描き友禅のきものを作るには
伸びやかな味わいの感じられる手描き友禅のきもの。
「誂京染」では、日本画やデザインなどベースをしっかり学んだ職人たちが活躍しています。
見本帳からデザインを選ぶほかに、下絵から描いてもらうことも可能。
下絵描き・糊置き
1. 図案が決定したら、洗うと消える青花染料を用いて、生地に下絵を描いていきます。
2. 太い筆で描いた後、糊置きに必要な輪郭を際立たせるよう、細筆でなぞります。
3. 下絵で描いた輪郭線を、円錐形の糊袋から絞り出したゴム糊の細線でなぞります。
地染めや色挿しをします。
型染した生地や、糊置きを終えた生地は、地色を染める地染の行程に入ります。
下記の写真では端から端まで一反の生地を張り渡し、大きな刷毛を用いて地色を引き染しています。
ムラなく仕上げるために、素早く刷毛を動かします。
地色の引き切りやぼかしなど、匠の技で染め上げます。
引き染め・地染め
1. 生地にたるみが出ないよう、竹やファイバー素材でピンと伸子張りします。
2. 大きめの刷毛を用いて引き染します。
色挿し
細かい模様の一部を染料や顔料で彩色するのが、色挿しの工程。
筆や刷毛を使い分け、色を重ねたりぼかしたりしながら、友禅染ならではの風格ある模様を染めていきます。
きものが一気に完成に近づく工程です。
▲ 瑞雲の模様の一部を彩色している様子。小さな刷毛や筆を用いて、鮮やかな色を染めていきます。
色を定着させ、水洗いします
色挿しの終わった生地は染料を定着させるため蒸気で蒸します。
蒸箱の中に反物を吊りますが、模様の種類や地色によって、蒸し時間を変えていきます。
蒸箱から出された反物は、余分な糊や染料を落とすために大量の水で洗われます。
昔は「友禅流し」といって、鴨川などでも行われていましたが、現在では井戸水を用いて、屋内で行います。
蒸し
▲ 15〜16反の生地が、一気に蒸箱の中に吊り下げられます。具合を見ながら時間を調節します。
水洗い
▲ 色とりどりの反物が水に洗われる様子です。より鮮やかに色が浮かび上がって見えてきます。
きものに加工を施します
友禅染の平明な美しさに、豪華さ、重厚感を加えるのが、刺繍。
模様の縁取りをしたり、葉や花弁を繍い表したり、さまざまな手法を用いて、刺繍していきます。
製作には何日もかかる場合も。
仕上がった生地に金箔を散らしたり、金砂子を吹きつけたりしながら、きものに最後の装飾を施す、金加工。
模様に合った金加工を施すことで、きものがいっそうゴージャスに彩られます。
刺繍
▲ ぴんと張った生地に丁寧に針を入れていきます。ふっくらとした刺繍はとても華やかな印象
金加工
▲ 金箔を散らしている様子。箔の大小、緩急をつけた散らし方などには、熟練の技が必要です